島原航路のこと

A 乗降客数の推移

 

大牟田側の記録による乗降客数の推移を表に示す。(乗降客数は島原側の文献と若干異なる場合がある。)

戦前、戦時中は、観光を理由とする移動の需要はそれほど多くなかったが、戦後は飛躍的に伸びている。

大牟田市の石炭産業は戦後の復興を牽引し、大量の人口流入が起こった。昭和20年に12.8万人だった人口は昭和30年には20.2万人となっている。この人口増加とともに、平和の到来により観光に対しても需要が高まったのである。

昭和327月には雲仙のロープウエイが開業する。昭和31年から32年の乗降客数の全体の伸びは2.3%であるが、同年の10月の登山シーズンの伸びは16.1%となっている。

しかし、順調に伸び続けた乗降客数は昭和32年をピークとして減少に転じる。大牟田市の人口のピークである昭和34年のより早い時期であるが、これは昭和33年の有明フェリーの運行開始に影響を受けている。大牟田市内の自動車(乗用、貨物、自動三輪)は昭和22年時点で329台、昭和33年時点で3,069台となっている。現在の約8万台からすれば、少ないと思われるが、渡航後も乗ってきた自動車で行動できるフェリーは利用が拡大した。また、それまで三池港まで来て渡航していた熊本県北の人たちは、自動車利用者でなくても、長洲から出航するフェリーを利用することとなる。

昭和35年の大牟田側(乗客)の極端な落ち込みは、大牟田のまちが動乱を極めた三池争議によるものである。争議支援の応援部隊の流入等、島原側(降客)からの移動の需要は一定数あったと思われる。

昭和40年代の半ばになると、運航1回当りの乗客数は40人前後となり、定員役300名の大型船での運航は非効率となってくる。そこで、高速船の導入が検討される。高速船は100名以下の定員となるが、乗客は時間を節約することができ、運搬する側も運航回数をそれまでの5往復から6往復に増やすことができる。高速船の導入により、昭和48年で乗降客数は一時的に回復した。高速船の導入で大型船は即廃止、ということにはならず、しばらくの間、高速船と大型船を併用して運航が行われた。なお、時間が短縮できる高速船については特急料金のように『高速運賃』が設定されていた。


普賢岳災害は島原航路をはじめ島原観光に大きな打撃を与えた

平成211月から始まった雲仙普賢岳の噴火は、島原半島にとって200年ぶりの大きな災害となった。特に平成363日に発生した火砕流は死者・行方不明者42人を出す大惨事となった。普賢岳東麓は立ち入り禁止となり、交通は寸断された。島原観光汽船鰍ヘ同年620日から1ヶ月間、道路、鉄道が遮断された島原市−南高来郡布津町間の海上による人員輸送のため、島原行き航路を2往復に減便し、高速船を提供した。島原航路の利用は一気に落ち込んだ。

普賢岳の噴火活動は平成74月で終息するが、乗降客数は回復せずに平成931日から運休、島原観光汽船鰍ヘ解散する。採算ラインは78千人の利用と言われており、普賢岳災害以来、この数を下回っていた。累積赤字は5,900万円。同年3月に三池炭鉱は閉山し、4月に消費税が3%から5%に改定され、地域の経済活力の回復が見込めないことも運休の背景にあった。

5ヶ月の運休期間の後、平成9811日より、島原鉄道鰍ェ航路を再開する。島鉄は、再開にあたり、6万人でも採算が取れるような経営を行うことを宣言した。

再開1周年を記念して、平成10811日に新型船「島鉄1号」が就航し、大幅な利用増の起爆剤として期待された。このとき、料金は据え置かれたが、便数が往復6便から5便に減便された。しかし、新型船の効果により、それまでひと月4千人程度だった利用者数が約2割向上した。

その後、地域経済の状況は良くはなかったが、島原鉄道鰍ヘ再開時の宣言どおり、相当な経営努力を行い平成16年まで黒字を維持した。

ところが、燃料費が高騰し、好調は長くは続かなかった。平成16年頃まで1バレル当たり30ドル前後で推移していた原油価格は、平成18年には50ドルを超え、さらに平成21年には70ドルを超え、平成23年以降は100ドル前後で推移している。

この原油価格の高騰に乗降客数の減少が加わり、島原鉄道鰍フ経営努力は打ち消された。平成2021年は一旦黒字を取り戻したものの、現在まで赤字が続き、平成24年度での赤字は25百万円を超えた。

そして、平成262月、ら減便と運賃の値上げ(4月より実施)が発表された。この影響がさらに高速船ばなれにつながることが懸念されている。

 

乗降船客数(三池港内國航路)

S.51

66,005

72,107

138,112

乗員数

上陸数

合計

S.52

64,840

70,641

135,481

S.12

13,633

13,035

26,668

S.53

71,816

64,746

136,562

S.13

13,045

13,101

26,146

S.54

63,811

70,277

134,088

S.14

14,481

15,489

29,970

S.55

63,887

70,792

134,679

S.15

17,925

17,674

35,599

S.56

62,968

69,454

132,422

三池〜島原間渡船乗降人員調(升金汽船)

S.57

64,237

70,908

135,145

乗客数

降客数

合計

S.58

63,390

71,565

134,955

S.20

20,834

20,934

41,768

S.59

61,176

67,386

128,562

S.21

50,326

50,308

100,634

S.60

56,793

63,146

119,939

S.22

82,882

87,648

170,530

S.61

57,601

64,016

121,617

S.23

56,058

66,468

122,526

S.62

53,100

59,887

112,987

S.24

62,084

69,636

131,720

S.63

53,299

59,420

112,719

S.25

60,916

64,858

125,774

H.1

53,053

60,318

113,371

S.26

65,525

69,617

135,142

H.2

45,974

45,387

91,361

三池、島原間渡船乗降客数(島原観光汽船梶j

H.3

24,114

27,772

51,886

乗客

降客

合計

H.4

27,539

31,854

59,393

S.27

77,079

79,389

156,468

H.5

27,090

30,708

57,798

S.28

108,386

102,415

210,801

H.6

31,629

35,255

66,884

S.29

105,661

114,367

220,028

H.7

29,845

33,161

63,006

S.30

105,818

114,665

220,483

H.8

28,764

32,402

61,166

S.31

107,586

113,918

221,504

輸送人員実績(島原鉄道梶j

S.32

111,107

115,417

226,524

年度

三池港発

島原港発

輸送人員

S.33

104,940

103,851

208,791

H.9

16,448

15,995

32,443

S.34

94,147

98,768

192,915

H.10

31,047

28,394

59,441

S.35

56,951

100,172

157,123

H.11

36,924

34,016

70,940

S.36

84,822

91,457

176,279

H.12

36,894

34,385

71,279

S.37

81,919

92,914

174,833

H.13

38,885

34,951

73,836

S.38

H.14

37,149

34,266

71,415

S.39

73,791

81,444

155,235

H.15

36,601

33,967

70,568

S.40

67,671

76,015

143,686

H.16

35,009

33,530

68,539

S.41

67,742

61,775

129,517

H.17

33,166

32,718

65,884

S.42

61,997

69,766

131,763

H.18

30,892

29,467

60,359

S.43

81,043

92,068

173,111

H.19

29,811

29,572

59,383

S.45

69,921

77,553

147,474

H.20

28,723

27,503

56,226

S.46

68,150

75,883

144,033

H.21

25,189

24,868

50,057

S.47

64,529

69,636

134,165

H.22

22,381

23,020

45,401

S.48

73,004

82,029

155,033

H.23

21,176

21,627

42,803

S.49

74,685

76,598

151,283

H.24

19,652

20,740

40,392

S.50

72,936

77,044

149,980

H.25

 

 

 

 

 

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